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晴れの日だけ踊るマドンナ

by 立花実咲|Misaki Tachibana

彼女は、いつも輪の真ん中にいる。

晴れた日が好き。特に、雨の少ない、夏の始まりが好き。

ばんざいをして、両手をひらひら、風にゆれる花びらのように動かしながら踊る。

真夏よりも、まだやわらかい陽射しは、踊るのにちょうどいいの、と、かつて彼女は言っていた。

雨の日は、いつもうなだれて、元気がない。いつも踊る踊りも、すっかり忘れてしまったかのようにじっと立ったままだ。

そして、いつもより少し長く眠る。次の太陽が昇るまで、何かを祈るように。

彼女の白い肌は、晴れの日にたっぷり踊るくせにぜんぜん日焼けしない。

ぼくがすっかり色濃い緑に染め上がって、いよいよ葉を落として衣替えしようかという時でも、彼女はまだくるくると太陽の下で踊っていることもある。

今年の夏は、だから、雨が少ないといいな、と思う。

雨が少ないと、彼女のステップを踏む足元がおぼつかなくなるから、本当はしっかりと降った方が、ぼくにとっても彼女にとってもありがたいことなのだけれど。

それでも、彼女がうれしそうに、きらきら、木漏れ日を振りまきながら踊る姿を、ぼくはなるべく長く見ていたいなと思う。

なぜならぼくには踊る手がない。軽やかに飛んだり跳ねたりするための足もない。z

じっと彼女が踊るのを見上げているあいだに、やがて、太陽の昇る高さがどんどんと高くなり、真上に上がるピークと暑さを越えると、徐々に日が短くなって、彼女が踊り疲れて眠る時間がだんだん長くなってくる。

その時期になってようやく、ぼくは踊る彼女に話しかける。

「やあ、そろそろお日様の光もお腹いっぱいだろう。こっちへおいでよ、冷たくて、気持ちいいよ」。

彼女は手のひらを思わせぶりにひらひらさせて、ぼくに気づいているのかそれとも踊り疲れているだけなのか分からないけれど返事をしないでずっと手を振り続ける。

ぼくも、そんなことだろうと思って、その先は何も言わない。

まあ、彼女が踊り疲れるにはまだ早いか。

そう思って、ぼくはまばゆい太陽に光に目を細めながら彼女が木陰をつくったりつくらなかったりする地面の上から見上げている。


立花実咲|Misaki Tachibana
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